人間に生まれ変わる確率は計算できるのか
「生まれ変わって、また人間になれる確率はとても低い」
「次は人間ではなく、虫や植物になるかもしれない」
そんな話を、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
地球上には人間以外の生き物が非常に多いため、すべての生命から無作為に次の生まれ変わり先が選ばれるなら、人間を引き当てる確率は低そうに感じます。
しかし、本当に、
人間に生まれ変わる確率は何%
と計算できるのでしょうか。
結論からいうと、科学的に意味のある確率としては計算できません。
生まれ変わりの存在や仕組みが科学的に確認されておらず、確率計算に必要な「何が、どの範囲から、どのような規則で選ばれるのか」が分からないからです。
ただし、いくつかの仮定を置いて「もし地球上の生物から無作為に選ぶなら」と遊びとして計算することはできます。
今回は、生まれ変わりの確率が計算できない理由と、仮定によって数字がどれほど変わるのかを考えてみます。
結論:計算式は作れても、確率は分からない

確率を計算するには、少なくとも次の3点が必要です。
- 選ばれる候補の範囲
- それぞれが選ばれる規則
- 実際に起きた回数や観測データ
例えば、一般的な6面のサイコロで「1」が出る確率は、
1÷6=約16.7%
と計算できます。
候補が1~6の六つであり、それぞれの面がほぼ同じ確率で出るという前提があるからです。
ところが、生まれ変わりについては、
- 生まれ変わりが実際に起こるのか
- 人間だけが生まれ変わるのか
- 動物や植物にも生まれ変わるのか
- 同じ時代に生まれるのか
- 地球上だけが対象なのか
- 生物の種類で選ぶのか
- 個体ごとに選ぶのか
- 善悪や行動によって行き先が変わるのか
といった基本的な条件が確定していません。
そのため、数字を出すことはできても、それは設定したルールの中だけで成立する架空の確率になります。
生まれ変わりは科学上の確立した現象ではない
生まれ変わりは、さまざまな宗教や思想の中で語られてきた概念です。
ただし、その内容は一つではありません。
人間から再び人間になるという考え方もあれば、動物を含む別の生命になるという考え方、行いによって次の存在が決まるという考え方もあります。
つまり、「死後にすべての生物から無作為抽選が行われる」という共通ルールがあるわけではありません。
また、生まれ変わりがどのような仕組みで起きるのかを観測し、同じ条件で繰り返し検証できる科学的なデータもありません。
したがって、現時点では、
人間に生まれ変わる確率は○%
という確かな数字は存在しません。
仮定1:生物の「種類」から平等に選ばれる場合

ここからは、事実としての確率ではなく、話のネタとして仮定を置いて考えてみます。
最初は、
地球上のすべての動物・植物の種類から、同じ確率で一種類が選ばれる
というルールです。
IPBESの世界評価報告書では、地球上に存在する動物と植物は約800万種と推定され、そのうち約75%を昆虫が占めるとされています。
現生人類は、生物分類上ではホモ・サピエンスという一つの種です。
仮に800万種のすべてが同じ確率で選ばれるなら、
1÷8,000,000
となります。
計算すると、
0.0000125%
です。
約800万回に1回ということになります。
この数字だけを見ると、「人間に生まれ変わるのは奇跡」という話に見えます。
しかし、この計算には大きな問題があります。
種類ごとに同じ確率とは限らない
人間も一種、数が少ない動物も一種、地球上に大量にいる昆虫も一種として数えています。
例えば、
- 人間という一種
- ある昆虫という一種
- ある樹木という一種
をすべて一枚ずつ抽選箱へ入れる計算です。
しかし、生まれ変わりがあるとしても、「種類を一つ選んでから生まれる」という証拠はありません。
800万分の1という数字は、生物の種数を使って作った架空の種族くじにすぎません。
仮定2:大きな分類から選ぶ場合
今度は、もっと大ざっぱに分類してみます。
例えば、生まれ変わり先を次の四つに分けます。
- 人間
- 人間以外の動物
- 植物
- その他の生命
これらが平等に選ばれるなら、人間になる確率は、
1÷4=25%
です。
先ほどは0.0000125%だったのに、分類方法を変えただけで25%になりました。
さらに、
- 人間
- 犬
- 猫
- その他
という四分類なら、やはり人間は25%です。
つまり、計算結果は、誰が候補をどのように分けるかによって自由に変えられてしまいます。
この時点で、客観的な確率とはいえなくなります。
仮定3:現在生きている「個体数」から選ぶ場合
次に、
現在、地球上に生きているすべての個体から一つを選ぶ
と考えてみます。
この場合、人間になる確率は、
人間の個体数÷地球上にいる全生物の個体数
となりそうです。
しかし、この式は実際には計算できません。
地球上の全個体数が分からない
人間の人口は統計で比較的正確に推計できますが、地球上にいるすべての、
- 昆虫
- 魚
- 鳥
- 哺乳類
- 植物
- 菌類
- 細菌
- その他の微生物
の個体数を数えることはできません。
そもそも、植物や菌類では「一つの個体をどこまでとするか」が単純ではない場合があります。
地下でつながった菌糸や、根から増える植物を、一個体と数えるのか複数と数えるのかによっても結果が変わります。
地球上の生命を炭素量で比較した研究では、植物が生物全体のバイオマスの大部分を占め、人間の割合はごく小さいと推計されています。しかし、バイオマスは重さの比較であり、個体数や生まれ変わりの確率を示すものではありません。
仮定4:新しく生まれる命から選ぶ場合
生まれ変わり先は、現在生きている個体ではなく、
次に誕生する生命の中から選ばれる
と考えることもできます。
その場合の式は、
人間として生まれる数÷すべての生命が生まれる数
となります。
しかし、これも計算できません。
人間の出生数は人口統計から推計できますが、同じ期間に、
- 昆虫が何匹生まれたか
- 魚卵がいくつ孵化したか
- 植物の種がいくつ発芽したか
- 微生物が何回分裂したか
を網羅するデータはありません。
さらに、卵、種、胞子、分裂などを、どの時点で「誕生」とするかも決めなければなりません。
微生物まで含めれば、短時間に発生する生命の数は人間の出生数をはるかに上回ると考えられますが、正確な比率は分かりません。
虫に生まれ変わる確率が高いといわれる理由
「生まれ変わったら、ほとんどの確率で虫になる」という話には、おそらく次のようなイメージがあります。
- 昆虫は種類が多い
- 昆虫は個体数も多そう
- 人間は生物全体の中では一種類にすぎない
IPBESの推計では、約800万種の動物・植物のうち、およそ75%が昆虫とされています。
この数字を「種類による抽選」に当てはめれば、昆虫になる確率は約75%になります。
しかし、これはあくまでも、
すべての動植物の種が、同じ確率で一種類ずつ選ばれる
という仮定での話です。
実際の生まれ変わりに、そのような抽選方式があることを示す根拠はありません。
したがって、
人間は0.0000125%、昆虫は75%
と事実のように紹介するのは適切ではありません。
微生物を含めると、さらに計算できなくなる
「すべての生命」を対象にするなら、動物や植物だけでなく、細菌や古細菌などの微生物も含める必要があります。
しかし、微生物には、
- 未発見・未分類のものが多い
- 分裂で増える
- 一個体の定義が難しい
- 環境によって数が大きく変わる
といった特徴があります。
ウイルスについても、生物に含めるかどうかで議論があります。
どこまでを生まれ変わり候補に含めるか決められない以上、分母を確定できません。
確率計算で分母が決まらないということは、答えも決まらないということです。
人間の数だけを見ても確率にはならない
現在の世界人口や、これまでに生まれた人間の総数を使えば、何らかの確率を出せそうにも思えます。
これまで地球上に生まれた人類の総数は約1,080億人とする推計があります。
しかし、この数字から分かるのは、人類の人口史に関する推計です。
生まれ変わりが、
- 過去に生きた人同士で循環するのか
- 新しい魂が生まれるのか
- 同時に存在できるのか
- 動物との間を行き来するのか
が分からないため、約1,080億という数字だけでは確率を計算できません。
人口が増えていることを理由に、
魂の数が増えた
動物から人間へ生まれ変わった
と結論づけることもできません。
「人間として生まれた奇跡」とは別の話
人間として生まれた確率について、
両親が出会う確率
一つの精子と卵子が受精する確率
祖先が途切れず存在した確率
などを掛け合わせ、「自分が生まれた確率は天文学的に低い」と表現することがあります。
これは「特定の自分が、今の両親から、現在の遺伝的組み合わせで生まれる確率」を考える話です。
一方、
生まれ変わったときに人間になる確率
は、死後の仕組みを想定した話です。
両者は似ているように見えますが、計算している対象が異なります。
前者も条件の設定によって数字が大きく変わりますが、少なくとも生殖や遺伝という観察可能な現象があります。
生まれ変わりの確率には、その基礎となる観測可能な仕組み自体が確認されていません。
確率に見えて、実は「世界観」の話
生まれ変わりに関する数字は、数学の問題というより、どのような世界観を採用するかによって決まります。
例えば、次のように設定すれば、それぞれ違う結果になります。
人間は必ず人間に生まれ変わる
人間になる確率は100%です。
すべての動植物の種から平等に選ぶ
約800万分の1、つまり約0.0000125%です。
人間と動物の二択
それぞれ同じ確率なら50%です。
前世の行いによって決まる
無作為抽選ではないため、単純な確率を設定できません。
生まれ変わりは存在しない
人間に生まれ変わる確率は0%です。
どの数字も、その前提を採用した場合にだけ成立します。
前提の正しさを確認できない以上、科学的な答えは出せません。
それでも計算してみる意味はある?
正確な確率が分からなくても、この話には面白さがあります。
なぜなら、
何を一つと数えるのか
どこまでを候補に含めるのか
平等に選ばれるとはどういうことか
を考えるきっかけになるからです。
これは、生まれ変わりだけでなく、普段目にする確率にも通じます。
数字を見るときは、
- 分母は何か
- 候補をどう分けたか
- すべて同じ確率なのか
- 実測値か、仮定上の数字か
- 調査対象から外れているものはないか
を確認する必要があります。
「人間に生まれ変わる確率は800万分の1」という数字も、計算自体は間違っていません。
しかし正確にいうなら、
約800万種の動植物の中から、すべての種を同じ確率で一つ選ぶという架空のルールなら、ホモ・サピエンスを選ぶ確率は約800万分の1
となります。
前提を省略すると、架空の計算が科学的事実のように見えてしまいます。
まとめ:人間に生まれ変わる確率は分からない
人間に生まれ変わる確率は、科学的には計算できません。
理由は、
- 生まれ変わりの仕組みが確認されていない
- 候補となる生命の範囲が決まっていない
- 種類と個体のどちらで数えるか分からない
- それぞれが同じ確率で選ばれる根拠がない
- 観測データがない
ためです。
約800万種という生物の推定数を使えば、人間を約800万分の1とする遊びの計算はできます。
ただし、それは生まれ変わりの確率ではなく、
800万種から一種類を平等に選ぶ架空のくじの確率
です。
「次も人間に生まれる確率は何%か」という問いに、確かな数字で答えることはできません。
それでも、数え方や前提を変えるだけで結果が大きく変わることを知ると、世の中にあるさまざまな「確率」の見方も少し変わってくるのではないでしょうか。
ハテナさんのひとこと
800万分の1という数字は面白いけれど、それは「800万種から平等に選ぶ」と決めた場合の話。
確率を見るときは、数字より先に「どんなルールで計算したのか」を確認してみよう。
参考資料
- IPBES「生物多様性と生態系サービスに関する地球規模評価報告書」
- Bar-On、Phillips、Milo「The biomass distribution on Earth」
- Our World in Data「How has world population growth changed over time?」

