貯金はいくらあれば普通?平均より中央値で考えたい理由
「みんなは、どのくらい貯金しているのだろう」
お金の話は身近な人ほど聞きにくいため、自分の貯金が多いのか少ないのか分からないことがあります。
100万円あれば普通なのか。
500万円でも少ないのか。
1,000万円を超えて、ようやく安心できるのか。
統計を見ると、二人以上世帯の金融資産は平均1,940万円、単身世帯でも平均919万円です。
この数字だけを見れば、
そんなに貯めていない自分は、かなり少ないのでは?
と不安になるかもしれません。
しかし、平均額だけで「普通」を判断するのはおすすめできません。
2025年の調査では、金融資産の中央値は二人以上世帯で720万円、単身世帯では130万円でした。平均値と中央値には、非常に大きな差があります。
結論からいうと、誰にでも当てはまる「普通の貯金額」はありません。
年齢、家族構成、収入、住まい、借金、今後必要になるお金によって、同じ貯金額でも意味が変わるからです。
今回は、平均値と中央値の違いを確認しながら、自分にとって必要な貯金額を考えます。
結論:「普通」を知るなら平均値より中央値
2025年のJ-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査」によると、金融資産保有額は次のようになっています。
| 世帯構成 | 平均値 | 中央値 |
|---|---|---|
| 単身世帯 | 919万円 | 130万円 |
| 二人以上世帯 | 1,940万円 | 720万円 |
平均値だけを見ると、単身世帯でも約900万円、二人以上世帯では約2,000万円あります。
ところが中央値は、単身世帯で130万円、二人以上世帯で720万円です。
平均値とは
全世帯の金融資産を合計し、世帯数で割った数字です。
一部に数千万円、数億円の資産を持つ世帯がいると、全体の平均が大きく引き上げられます。
中央値とは
金額が少ない順に世帯を並べたとき、ちょうど真ん中に位置する世帯の金額です。
そのため、「多くの人に近い位置」を知りたい場合は、平均値より中央値の方が実感に近くなることがあります。
つまり、
単身世帯の普通は919万円
と考えるのは適切ではありません。
平均値と中央値の差が大きいこと自体が、世帯間の金融資産にかなりの開きがあることを示しています。
「貯金」と「金融資産」は同じではない
ここで注意したいのが、調査で使われている「金融資産保有額」です。
日常会話でいう貯金は、銀行の普通預金や定期預金を指すことが多いでしょう。
一方、J-FLECの金融資産には、将来への備えや運用のために保有する次のようなものが含まれます。
- 預貯金
- 株式
- 投資信託
- 債券
- 生命保険
- 個人年金保険
- その他の金融商品
日常の支払いや引き落としのために置いている預金は、調査上の金融資産に含まれない場合があります。また、自宅や土地などの不動産も含みません。
したがって、統計の「金融資産720万円」と、自分の銀行口座の残高720万円を、そのまま比較することはできません。
自分と比べるときは、
預金だけを見るのか
株式や投資信託、保険を含めるのか
をそろえる必要があります。
なぜ平均額はあんなに高いのか
総務省の家計調査では、2025年の二人以上世帯の貯蓄現在高は平均2,059万円でした。
しかし、約3分の2に当たる66.1%の世帯が、この平均額を下回っています。貯蓄がある世帯だけを並べた中央値は1,264万円で、貯蓄ゼロを含めた参考中央値は1,167万円でした。
つまり、
平均2,059万円だから、多くの家庭が2,000万円ほど持っている
わけではありません。
少数の高額貯蓄世帯が平均を押し上げているため、平均以下の世帯の方が多数になります。
統計を見るときは、
- 平均値
- 中央値
- 平均以下の人の割合
- 調査対象
- 何を資産として数えたか
をセットで確認することが大切です。
年代が違えば「普通」も変わる
20代と60代を同じ金額で比べることはできません。
20代は就職してからの年数が短く、収入もこれから増える時期です。
30〜40代では、住宅購入や子育て、教育費によって貯金が増えにくい家庭があります。
50〜60代になると、子どもの独立や住宅ローンの返済、退職金などにより金融資産が増える世帯もあります。
2025年の二人以上世帯を含む年齢別集計の一例では、金融資産の平均値と中央値は次のようになっています。
| 世帯主の年代 | 平均値 | 中央値 |
|---|---|---|
| 20代 | 318万円 | 50万円 |
| 30代 | 898万円 | 200万円 |
| 40代 | 1,339万円 | 361万円 |
| 50代 | 1,668万円 | 500万円 |
| 60代 | 2,301万円 | 1,000万円 |
| 70代 | 2,117万円 | 1,000万円 |
この数値は世帯構成を含む集計であり、すべての人に当てはまる目標額ではありませんが、年代による差の大きさは分かります。
総務省の2025年調査でも、二人以上世帯では50歳未満の年代で平均負債が平均貯蓄を上回り、50歳以上では平均貯蓄が平均負債を上回っています。住宅ローンなどの影響により、若い世代は貯金だけを見ても家計の状態を判断しにくいことが分かります。
貯金額だけで家計の良し悪しは決まらない
同じ500万円を持っていても、家計の状態は人によって違います。
Aさん
- 貯金500万円
- 持ち家で住宅ローンなし
- 毎月の生活費15万円
- 安定した収入がある
Bさん
- 貯金500万円
- 住宅ローン2,500万円
- 子どもの進学を控えている
- 毎月の生活費35万円
Cさん
- 貯金500万円
- 賃貸暮らし
- 収入が月ごとに変動する自営業
- 大きな設備更新を予定している
全員の貯金額は同じですが、安心度は異なります。
確認したいのは、貯金の総額だけではありません。
- 毎月いくら必要か
- 収入はどの程度安定しているか
- 借金はいくらあるか
- 今後大きな支出があるか
- 家族を何人支える必要があるか
- 病気や休業時にどんな保障があるか
これらを含めて考える必要があります。
まず確保したいのは「生活防衛資金」
平均額を追いかける前に考えたいのが、収入が止まったときの備えです。
一般に生活防衛資金とは、失業、病気、仕事の減少、急な修理などがあっても、当面の生活を続けるためのお金を指します。
必要額は職業や家族構成によって変わりますが、考え方は単純です。
1か月の最低生活費 × 収入がなくても耐えたい月数
例えば最低生活費が月20万円なら、
| 備える期間 | 必要額 |
|---|---|
| 3か月分 | 60万円 |
| 6か月分 | 120万円 |
| 1年分 | 240万円 |
となります。
会社員で傷病手当金や雇用保険を利用できる人と、休めば売上が止まる自営業者では、必要な備えが同じとは限りません。
会社員でも、扶養家族が多い、転職に時間がかかる、住宅ローンが大きい場合は、多めの現金が必要になることがあります。
自分の貯金を評価するときは、
平均より多いか
より先に、
収入が止まった場合、何か月暮らせるか
を計算した方が実用的です。
近い将来に使うお金は、別に分けて考える
貯金が500万円あっても、そのうち300万円を2年後の車の買い替えに使う予定なら、自由に使える備えは200万円です。
今後予定される支出には、次のようなものがあります。
- 車の購入や車検
- 住宅の修繕
- 引っ越し
- 子どもの進学
- 結婚や出産
- 家電の買い替え
- 家族の介護
- 仕事の設備更新
- 旅行
- 税金や社会保険料
貯金は、次の3つに分けると整理しやすくなります。
1.日常生活に使うお金
毎月の支払い、引き落とし、予備費です。
2.数年以内に使う予定のお金
車、教育、修繕、旅行など、用途が決まっている資金です。
3.長期的に備えるお金
老後、介護、将来の生活など、当面使わない資金です。
口座残高をすべて「余裕のある貯金」と考えず、用途ごとに分けると現在地が見えやすくなります。
借金がある場合は「純資産」も見る
貯金だけでなく、負債を差し引いた状態も大切です。
計算方法は、
金融資産-負債=純金融資産
です。
例えば、
- 預貯金:500万円
- 投資信託:300万円
- 住宅ローン:2,000万円
なら、金融資産は800万円ですが、負債を差し引くとマイナス1,200万円です。
ただし、住宅ローンには自宅という資産が対応しているため、この数字だけで家計が危険とは判断できません。
重要なのは、
- 毎月無理なく返済できているか
- 金利上昇へ対応できるか
- 収入が減っても返済できるか
- 退職までに返せる見込みがあるか
- 修繕費も確保できているか
です。
総務省の2025年調査では、二人以上世帯の平均負債は675万円、負債を持つ世帯の割合は37.5%でした。負債の約9割は住宅・土地に関するものでした。
借金があること自体ではなく、その借金を管理できているかを見る必要があります。
貯金ゼロの人も一定数いる
金融資産を全く持たない、あるいは将来への備えとしての金融資産がない世帯も存在します。
2025年のJ-FLEC調査では、金融商品を「いずれも保有していない」と回答した割合は、単身世帯で11.1%、二人以上世帯で5.4%でした。別の設問や「金融資産非保有」の定義では割合が異なるため、数字を比較するときは定義の確認が必要です。
貯金が少ない人が珍しいわけではありません。
ただし、
貯金がない人もいるから、自分も問題ない
とは限りません。
突然の出費を借入れで賄う状態になれば、利息負担が増え、さらに貯めにくくなる可能性があります。
最初の目標は平均額ではなく、
- まず10万円
- 次に生活費1か月分
- その次に3か月分
と段階的に設定した方が続けやすくなります。
平均以上でも安心できないことがある
反対に、統計の平均を超えていても安心とは限りません。
例えば1,000万円の貯金があっても、
- 収入がなくなる予定
- 住宅の大規模修繕が必要
- 介護費が発生する
- 子どもの学費が続く
- 老後の生活期間が長い
- 事業資金も同じ口座に入っている
場合は、使えるお金が限られます。
「普通より多い」という事実と、「今後のお金が足りる」という判断は別です。
必要額は、今後の支出を簡単に書き出すことで見えてきます。
貯金と投資はどう分ける?
将来へ備えるお金を、すべて普通預金に置く必要はありません。
一方、数年以内に使う予定のお金まで値動きのある商品で運用すると、必要な時期に価格が下がっている可能性があります。
一般的には、
現金・預金で持ちやすいお金
- 日常の支払い
- 生活防衛資金
- 数年以内に使う予定の資金
- 元本割れを避けたいお金
長期運用を検討しやすいお金
- 当面使う予定がない
- 十年以上の期間を取れる
- 値下がりしても生活に影響しない
- 分散して積み立てられる
という分け方ができます。
投資額が増えたからといって、いつでも使える現金が不足しては困ります。
「金融資産は多いのに、急な支払いができない」という状態を避けるため、現金と運用資産の役割を分けることが大切です。
毎月いくら貯めれば普通?
毎月の貯金額にも、全員共通の正解はありません。
2025年のJ-FLEC調査を引用した資料では、貯蓄している二人以上世帯が年間手取り収入から預貯金へ回した割合は平均17%とされています。
ただし、これは全員が手取りの17%を貯めるべきという意味ではありません。
収入や家族構成によって、無理のない割合は変わります。
例えば、手取り月収30万円なら、
| 貯蓄割合 | 毎月の貯蓄 |
|---|---|
| 5% | 1万5,000円 |
| 10% | 3万円 |
| 15% | 4万5,000円 |
| 20% | 6万円 |
となります。
大切なのは、高い割合を一時的に達成することではなく、生活を壊さず続けられることです。
まず5%から始め、昇給、ローン完済、固定費削減などのタイミングで増やす方法もあります。
「普通の貯金額」を見るときの5つの条件
統計と自分を比べるなら、少なくとも次の条件を近づける必要があります。
1.単身か二人以上世帯か
単身と家族世帯では、収入も支出も異なります。
2.年代
20代と60代では、働いた年数や今後必要になるお金が違います。
3.年収
同じ貯金額でも、年収300万円と1,000万円では貯めるために必要な期間が違います。
4.持ち家か賃貸か
持ち家には住宅ローンや修繕費があり、賃貸には将来も家賃が続く可能性があります。
5.負債と今後の支出
教育費、住宅、介護、事業資金などを含めて考える必要があります。
条件が違う人の数字を見て落ち込んでも、正確な比較にはなりません。
自分に必要な貯金額を出す簡単な方法
次の順番で考えると、目標額を整理できます。
ステップ1:最低生活費を出す
家賃、食費、光熱費、通信費、保険料など、生活を続けるための最低額を出します。
ステップ2:生活防衛資金を決める
最低生活費の3〜12か月分を、働き方や保障に合わせて考えます。
ステップ3:5年以内の大きな支出を書く
車、修繕、進学、引っ越し、設備投資などを加えます。
ステップ4:負債を確認する
ローン残高だけでなく、毎月の返済額と完済予定年齢も確認します。
ステップ5:老後など長期資金を別に考える
公的年金、退職金、持ち家、運用資産などを含めます。
計算式にすると、
生活防衛資金+近い将来の支出+長期的な不足見込み
が、自分の目標額になります。
平均額から逆算するのではなく、自分の予定から積み上げる考え方です。
貯金額を人と比べすぎない
他人の貯金額には、見えない事情があります。
- 親からの援助や相続
- 住宅を購入した時期
- 共働きか一馬力か
- 子どもの人数
- 退職金の有無
- 地域の生活費
- 株価上昇による評価益
- 借金の残高
同じ年齢、同じ年収でも、家計の条件は同じではありません。
統計は、自分を評価する成績表ではなく、
世の中にはどれくらい幅があるのか
を知るための資料として使うのがよいでしょう。
まとめ:普通より「自分の生活を守れるか」
2025年の金融資産保有額は、
- 単身世帯:平均919万円、中央値130万円
- 二人以上世帯:平均1,940万円、中央値720万円
でした。
平均値と中央値に大きな差があるため、平均だけを見て「普通」を判断することはできません。
また、貯金額の意味は、
- 年代
- 世帯構成
- 収入
- 毎月の生活費
- 負債
- 将来の支出
- 公的保障
- 働き方
によって変わります。
確認したいのは、
平均より多いか少ないか
ではなく、
急に収入が止まっても暮らせるか
近い将来の支出を準備できているか
借金を無理なく返せるか
将来へ向けて少しずつ増やせているか
です。
普通の貯金額は一つではありません。
自分の暮らしを守り、予定している未来へ進める金額が、その人にとって必要な貯金額です。
ハテナさんのひとこと

平均は、みんなの合計を割った数字。
自分の安心に必要なのは、「生活費の何か月分があるか」と「これから何に使うか」だよ。
参考資料
- 金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査2025年」
- 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年平均結果」

